2通目 永遠の別れと新しい出会い

 どれぐらい泳いだのだろうか?
 どれぐらい時間がたったのだろうか?

兄は疲れを顔に出さない 

いや、出したくないのだろう

でもこのまま海の中で休めば命は・・・ないだろう
沈んでいく 暗い海の底へ

ミムム
「お兄ちゃん・・・」

ルヴァヴァ
「ん? なんだ?」

ミムム
「こ、これからどうするの?」

兄は悩んでいた 目的地もいまだ決めていない
ただ兄は「大丈夫だ」といって私を安心させようとした

ジスス
「・・・なんだろう? この嫌な予感。」

ルヴァヴァ
「どうしたんだ?ジスス。」

ジスス
「いや・・・まさかとは思うけどさ。」

そのまさかは段々近づいてきた
別れもしないうちに
これが最後にみた兄の顔だったなんて 本当に予想外

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そう、私たちはその夜渦巻きに飲み込まれたのだった

運命だったのか 悪魔の罠だったのかは 知らない

私は溺れ 兄とは離れ離れになってしまった

それ以来

私は海への恐怖感しか覚えていない

私たち兄弟はこれで永遠あえなくなった

体という形では

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???
「大丈夫? しっかり!!」

ミムム
「う・・・・、ここは?」

???
「大丈夫、心配しないで。ここは・・・・」

気づいたときは記憶はなかった
大切な家族、兄たちのことも 言われるまでは

私を助けてくれた人はケロン軍所属の海軍の夫婦
ハーフと言う事も気づかれ記憶も無い私に温かく接し学校にも通わせてくれた
心から感謝した 私は学んだ戦う事も人を助ける事も一緒にいることもご飯を食べる事も言葉を使う事も全部教えてくれた

こんな私にも、夫婦の子供でもない私にもこれまでしてくれる夫婦の心がどれだけ大きかった事か

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数年経ち 私は一人前に自分でも生活できるようにもなった
あの夫婦には自分ができる精一杯のお礼をした

でも、「自分のために、また誰かを救うために今度はあなたが助ける番よ。それで十分うれしい」と言ってくれた
私の決心は深まり 私はケロン軍の海軍に所属した

1年働いて新入り 2年働いて下っ端 3年働いても下っ端・・・の上?

月日はどんどん風のように流れていった

海軍に入って5年 私は18歳になっていた
久々にここの船にも新人が入ってきた

私の上司は口上手く話し始める
さっさと終わって欲しい・・・なんせ、もう20分は過ぎているのに
こんな長い話していたらノルマがパーだよ;

新入りは全員で3人
男子2名 女子1名

私はルアアと言う女の子を世話する事になった まぁ、簡単に言えば仕事の手伝い

初日はまず仲良くなる事 任務を失敗しては・・・なるべくいけない
だから始めに私は仲良くなりキズナを深める事にした

ミムム
「さて、よろしくね。 え〜と・・・」

ルアア
「あ、ルアアと言います。一生懸命頑張りますので・・・」

ミムム
「あ〜ぅ。堅苦しいよ〜・・・なんていうかもっとさぁ、フレンドリーって感じに。 私も堅苦しいの苦手でさ〜」

ルアア
「では、シンプルに、よろしくお願いします。 ミムム先輩!!」

ミムム
「お! そんな感じ! ・・・ってもう名前覚えたの!? こんなに人数いるのにね〜。改めて、私はミムム。海軍下っ端暦5年!」
(先輩だって!! やばいよ〜 何だろうこの・・・うー!・・・まぁいいや)

ルアア
「5年も・・・すごいですね! あ、私はルアアって言います。」

ミムム
「ルアア・・・どこかで。 まぁいいや。 じゃあ、私も君のことルアアって呼ぶよ。いいよね?」

ルアア
「はい。 でも少し雰囲気が違いますね。 学校とは大違い。」

ミムム
「あぁ、ここの船のみんなフレンドリーって感じだから・・・船長以外はね・・・。」

最後に小声で「船長は話が長いしお真面目だからさ。」とつけたした

そんなこんなで私たちは仲良くなりともに強くなっていった
 私はルアアに戦う事を教えた 

武器はデッキブラシ 
始めはルアアも驚いていた 「デッキブラシ?掃除しかできないじゃん。」って言う顔で
でも私の使うデッキブラシは金属製の毛先で当たると痛い 実際、挑発で敵に当ててみたときはかなり痛がっていた・・・・らしいが

私の弟子だから教えたくなる オンリーワンの弟子だからね
銃とか剣とかは教えたくなかった 自分のどこかが嫌がったように

それから毎日寝る前にデッキブラシで戦う稽古を行なった
始めは普通の(掃除用)デッキブラシで教える はじめからできるやつだと意味が無いし本人もまだ下っ端だから

でも 彼女は面白い
戦うときはいつもの笑顔は消えて他の誰かと入れ替わったかの様に性格が一変した
優しい性格がいきなり怖くなったと言うか・・・・う〜んまだ私は言葉を覚えきれないな

不思議だった
私もあれほど人を信じれなくなったのに この子は別だった
なんていうか特別な存在って感じがした

その日も稽古が無事に終り 寝ようとしたところだった

ルアア
「やっぱり、ミムム先輩は強いですね。 私なんて弱いですよね・・・」

そんな言葉が彼女からもれた さっきは強気の別人がこれまで弱気になるなんて
でも私は怒りもしなかった その気持ちはとてもよくわかる
昔の自分もそうだったから 何もできない自分だったから

ミムム
「そんなことないさ。 ルアアはしっかり任務だって、私の手伝いだってしてるじないか。」

ルアア
「でも・・・ でも、これじゃ誰でも出来る事じゃないですか。 普通の人と同じゃないですか!」

ミムム
「普通、ねぇ。 普通ってどんな事だと思うんだい? もちろんルアアにとってさ。」

ルアア
「普通・・・ですか。」

そのあと彼女はしゃべれなくなった
まぁ、質問が難しいかったのかもしれないが
「もう寝ようか」と私はルアアをうながした


そう言えば私は何かを忘れている
本当にここでこういう生活をしていいのか?
なにか 誰かを 大切な人を忘れているような・・・・

でもそれは忙しい日々にかき消されていき
次第に自分の記憶からも消えていくのだった

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ルヴァヴァ
「・・・あれから一体どれぐらいの時間がたったのだろう。」

ジスス
「本当に、だけど・・・。」

ここはまた違う世界
違う空間 違う時間 違う星 違う季節

2人のケロン人はただ暗い空間で天井も無い空も見えない空間を見つめていた

あの事から妹はいなくなってしまった
死んだか 生きているかなんてどうでもいい ただ会いたい それだけだった

だけどいまの自分達にはここから抜け出す事もできない
抜け出せるわけがない


ルヴァヴァ
「やることは一つだ。」

ジスス
「そうだね。今はあの人を守るために修行するのみ。」

???
「なに言ってるの?」

突然 暗い部屋から
一人の女の声がした 足音が段々近くなる

ルヴァヴァ
「あいつか、あいつに関わるとろくな事がない、オレは先に戻ってる。」

そう言ってルヴァヴァは暗闇の中へ姿を消して行った

ジスス
「・・・なんだ、君なのか。」

そこにいたのは
耳飾に赤い宝石と青い宝石を飾った少女だった
肌の色は桃より濃い色をした目はつりあがっている少女だった

???
「うふふ・・・ルヴァヴァは逃げたみたいね。」

ジスス
「君のこと嫌いって訳じゃないみたいだけどね。」

???
「嫌いじゃ困るわ〜  好きでもこっちはお断りだけど。」

それはないなと思うジスス
それを察した少女は

???
「まぁ、別にいいんだけどね。」

「それじゃ、またね〜」そう言って少女はまた暗闇へ潜っていった

ジスス
「ミムム、君は一体どこにいるんだい?」

そうつぶやいて ジススも暗闇へ潜っていった

                      続く