第3章 第3話 宴(うたげ)のはじまり 前編

空飛ぶ船の中
あれ以来ネララとトネネは帰ってこない

何の目的で何のために出て行ったのかはセララ以外知らない。

あの日から1週間が過ぎようとしていた

リココ
「ネララ・・・どうして・・・。」

船の外の縁側に立ちムキュと一緒に夕焼けをながめていた

手紙があったあの日 リェノノが言っていた大きな雲が来る・・・
それってこのことだったのかな? 

そう思い沈んでいく夕日を目で追った

セララ
「こんなとこにいたのね。」

そういって船の中からセララが出てきた
本人は「夕日が見たいから」といっていた
でもなんとなく私に言いたい事があるようにも見えた。

セララ
「みんな、おなかがすいたって言ってたわよ」

リココ
「・・・作りおきのものがあるはずなんですけど、もうなくなってしまったんですか。」

セララ
「・・・ネララがいなくなって一週間、目的は何なのかしらね?」

そういって、自分は知っているくせに
私はそう思い横目でセララを見た

リココ
「・・・あなたは知ってるくせに。」

いつの間にか自分は鋭い目つきでセララを睨みつけているようだ
まるで自分が自分じゃないように・・・
昔はこの人に完璧な忠誠を立てていた自分が
これはどういうこと? 自分でもわからない。

セララ
「いつから、そんなに鋭くなったのかしら、昔とはずいぶん変わったわね。」

ムキュ
(・・・貴様・・・リココから離れろっ!)

突然ムキュの口が開いた、感情は怒りに満ちているようだ。
モードはノーマルから本体へ変わりつつある
こいつが本気を出してしまえば船もろとも飲み込まれてしまいそうだ

止めなくては!

リココ
「ムキュ!ダメ!セララ様に対してなんて口を! セ、セララ様お許しください。」

わたしは一喝したがムキュが言う事を聞かない
私はあせった
一方、セララは涼しい顔をしていた

まるで何も聞けなかった、聞こえなかったかの様に。

セララ
「・・・術もそろそろ解けてきたのかしら? リココ、何か思い出さない?」

何だろう、このいやな感じ
昔、味わったいやな感じ・・・

リココ
「・・・いえ、今は何も・・・それより術って何ですか? 知っているなら・・・」
(一体この方は何をおっしゃっているの?・・・術って・・・。)

セララ
「・・・忘れたの? だったら・・・」

セララはそうまもなく私のひたいに手をかざし魔術を詠唱し始めた・・・
ま、まさか、私に魔術を!?

今日のセララ様はいつもと違う!
私は恐怖に襲われそうになる・・・いや、自分の何かが失いそうで怖い


ムキュ
「ヤメロ・・・ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ! リココニテヲダスナ!!」

ムキュが叫んだときにはセララは詠唱をやめていた

空気がまるで赤く染まったように痛々しい・・・


気づけばすっかり夜になっていた
今日は星さえ見えない夜になりそうだ。

セララ
「風が出てきたわね・・・・そろそろ中に入りましょうか?」

リココ
「い、いえ 私はもう少しここにいます。」

セララ
「そう、風邪はひかないようにね、あと入るときは船の窓を閉めてきてね。」

リココ
「はい、わかりました セララ様。」

私はただあせるばかりだ、このままでは自分が犯した罪にそのまま従うようで
・・・考えてみれば私は何のためにここにいるのだろうか
セララ様に忠誠を誓った・・・はずなのに、それとも誰かに操られているような
でも、今日始めてセララ様に反発したような・・・一体どうして?

真実が知りたい 私がここにいる理由 

ムキュからは殺気が消え元に戻っていた
セララ様に対する態度がいきなり変わった
一体どういうことなのか。

ムキュ
(・・・さっきは。)

突然ムキュが口を開いてきた
他のみんなに聞かれるのが嫌なのも当然、テレパシーで私に意思を伝える。
私も応じて心でムキュに語りかける、昔から、一緒にいたときからやっている当たり前のこと

ムキュ
(さっきはすまなかった、わびる。)

リココ
(あら、私に言わないでセララ様におっしゃったら?)

ムキュ
(むう・・・・)

彼も相当自分の犯したことに反省しているようだ。
しかたがない・・・とは言えないが今回はおおめに見ることにした。
自分ではなんか納得がいかないなぁ。

リココ
「入ろうか。」

ムキュ
(いや、いい・・・ここにいる。)

リココ
「・・・そう、わかった。」

珍しい・・・
ムキュが私のそばを離れるなんて、あれ? 寂しいのは私の方なの?

そう思って私は船の中へ入った。

(ウ・・・ウウウウウウウウウ・・・・オオオオオ)

何だろう? ムキュが吠えているの?
私は扉を開けようとしたが恐怖で決心がつかない 仕方なく私は船の奥へ進んでいった

たぶん、ムキュは・・・当分帰ってはこないはずだろう。
私はここにいるべきか? 
ムキュについているのが私の役目なのに・・・

また、私はひとりぼっち・・・・

あの時みたいにひとりぼっち。

気づくと頬には一筋の涙が流れていた

リココ
「・・・・泣いてなんか、いられるか・・・私にはみんながいるんだ。」

そう自分に言い聞かせわたしは歩みを進めた。


______夢の国


こっちの国では宴が始めれられていた

時間は元の世界よりずいぶんとゆっくりで一日が長いように感じる・・・

みまま
「んん〜やっぱりお酒は美味しいわぁ。」

ネララ
「そうですねぇ〜。」


みままのいる屋敷では村人が月一度宴が開かれる

夕方から朝にかけて紅葉とお酒を楽しみながら

皆口々に雑談している 紅葉のことやら豊作のことやら

ちるる
「あんまり飲みすぎないでださいね、二日酔いしても知りませんよ。」

みまま
「・・・そんなこといわないでぇ、貴女も飲んだら?」

ちるる
「・・・我は未成年です。」

みまま
「もぉ、かたいこと言わないでさぁ・・・」

昔からこの雰囲気は変わらんな・・・
懐かしい・・・そして暖かい・・・・

ネララ
「・・・だが酒は美味いな。」

こちらはこちらで後始末が大変そうだ
ネララはかなり酔っ払っている
語源はしっかりしていてもかなり顔があかいのだが・・・

空には満月が浮かんでいる
今夜はとてもよい夜 永い夜 朝が来ない夜 そんな雰囲気があった
村人達もからり酒に酔っている

ネララ
「うーん? そういえば トネネはどこに行ったのだろうか?」

みまま
「う〜ん? どうしたのネララ〜?」

ネララ
(・・・こりゃまた随分と酔ったご様子。)

まぁ、そのうち戻ってくるはず・・・だ

あの時と同じように。

________________
一方トネネたちはまだらななの部屋にいた
まぁ、どちらも未成年なのでお酒には興味がないのは当たり前だが・・・

トネネ
「宴、始まっていたのか・・・」

そうつぶやいて窓の外を見つめる
主人が予想どうりべろんべろんに酔っている

嗚呼後始末が大変そうだな
そう思い笑ってしまう

らなな
「わたし達もいきますか?」

トネネ
「いや、わたしは酒には興味もないから。」

???
「でしたら・・・。」

がらっ
らななの部屋のふすまが開き女性が入ってきた
先ほどみままに説教(?)していた女だった

らなな
「せ・・・先生。」

???
「先生は・・・堅苦しいわ、今はあなたの母でしょ?」

トネネ
「母親なのか・・・。」

一目見ただけでこの二人は親子・・・・ではないかと思っていたが
予想は当たった

トネネ
「らななの母親、名前をたずねたい。」

???
「あら、お客様がいたのね 申し送れました、わたしはわここと申します。」

最後に「らななの母です」と言っていた

トネネ
「わたしはトネネ、師匠ネララとここに来ている。」

わここ
「あら、そうなのですか、よろしくお願いしますね。」

らなな
「えっと・・・お母さんはどうしてここに来たの? 巫女の仕事?」

わここは「あ、そうでした」と言っていた
完璧な性格だと思ったが・・・どこかがぬけている・・・な

わここ
「そうそう、らなな今日は宴のお酌は私に任せて彼岸花畑に行かなきゃ行けないんでしょう?」

らななは「あ、そうだった」といった
やはり親子にている、いや にるものだ

わここ
「それに、かなり冥界にいけないものが残っていたわよ。 早く成仏させないとこのままではだめだとおもうの。」

らななはしばらく考え「わかった行ってくる」と言った

トネネ
「あの、よかったら私も連れていけないか?」

らなな
「え・・・でも、あそこは綺麗な場所だけどかなり危険な場所だよ。」

トネネ
「む、剣術は一応長けているから大丈夫だ、心配するな。」

らなな
「では、決まりですね あ、ちょっと待っててください・・・今。」

らななは空に向かって呪文なものを詠唱し始めた
詠唱が終わると月が出ていたはずの空は一気に暗くなった
これはらななが心を許した相手にしか見えない・・・だとか

トネネ
(・・・・若干、不気味だ・・・これがあの世に続くのか。)

考えただけで寒気がした いくら強気でいる私でさえも怖いといったら怖い。

らなな
「さぁ、どうぞ こちらは冥界につながる穴です、足元に注意してくださいね。」

トネネ
「・・・あ、あぁ。」

わここ
「こっちの宴の手伝いは他の巫女にやらせるから心配ないわ さぁ、2人とも気をつけてね。」

そういって穴は消えてしまった
お師匠には教えない私だけの秘密・・・

中は真っ暗で何も見えない

らなな
「・・・怖いですか?」

トネネ
「あ、い、いや わたしは怖くなんて。」

らなな
「え、えっと、足震えてますが?」

らななの言うとおり私の足は震えが止まらなかった
暗いところは少々苦手だ・・・無論お化けも(妖怪は大丈夫なのだが)

ああ、なぜわたしは「ついていく」などといってしまったんだろうか

とねね
「ら、らなな まだなのか?」

らなな
「うーん、おかしいですね、もうそろそろお迎えがきてもいいはずなんですけど。」

トネネ
(っ!? 死ぬのかっ!?)

らなな
「あ、死ぬって意味じゃないんです、私の使い魔というか・・・管理人というか」

そういっているうちに向こう側から灯りが見えてきた

???1
「姐さーん!」

らなな
「来た来た、こっちです!」

向こうから飛んできたのは幽霊!?
まままま待ってっ

しかし灯りが来てくれるのは嬉しいが

???1
「あれ? お客さんでやんすか?」

らなな
「あ、そうなのよ こちらトネネ様です ネララさんの弟子をやっているお方で」

???1
「ほお、なるほどでやんす! あ!あちきは一号でやんす!」

トネネ
「あ、改めて、と、トネネだ・・・・しかし何で一号なのだ?」

一号
「うーん、それがあちきにもわからないもんで。」

らなな
「さぁ、立ち話はこれぐらいにして 行きましょうか。」

一号
「は、はいでやんす!」

変わった語尾だがなんだか親しいな これなら私も幽霊を克服できる・・・はず。


こうして三人は冥界の丘(別名彼岸花畑)に向かった


トネネ
(そういえば、なんで私たちはここに来たんだろうか?)

らなな
「トネネ様〜 こちらです、着きましたよ!」

トネネ
(まぁ、いいか・・・。)

どうせ、時間はまだあるんだし・・・ね
                 後編へ 続く