第3章 第1話 夢(む)の国へ

___ここは夢(む)の国。
たくさんの夢(ゆめ)が集い紅葉が集う場所。

季節を問わずに紅葉が楽しめる。

???
「あら? もう夕方ね、あの子はどこに行ったのかしら?。」

大きなイチョウの木下であるケロン人がつぶやく。
風とともに数枚の葉が空へと舞い上がる。

_____モミジの木の前

ネララ
ゆーやけこやけの・・・。」

かなり音程はずれているが気分よくネララは歌っている。

???
「赤とんぼ〜♪」

ネララ
「ん? 誰?あたしの歌を邪魔するやつ!」

いきなり歌っているのを邪魔され少し機嫌が悪くなる。

???
「私ですか?」

ネララ
「そ、あんただよ!あたしが気持ちよく歌っているのに邪魔して!」

???
「ん・・・そうなのね、邪魔してゴメンね。」

どうやら相手はネララと同じぐらいの少女。
何でだろう目が私と違うような。

ネララ
「あんた、目が見えないのか?」

???
「・・・まあ、そうですけど、目が見えないせいで友達もいないの。 私の友達は今は歌だけ・・・かな?」

ネララ
「ふーん、・・・だったらあたしがあんたの友達になってやるよ!」

???
「・・・え。 本当?」

ネララ
「本当、本当! この厄神ネララが友達になってあげる。」

???
「厄神・・・ネララ? 鬼姫(おにひめ)じゃないの?」

ネララ
「・・・ん、角生えてないからってなんでそんなこと知っているのさ。」

???
「みまま様に言われたの。厄神に近づくなって。」

彼女は目が見えないが相当の知識はあるようだ。
言われる言葉はかなり傷つく。

ネララ
「・・・やっぱりあたしは嫌われ者なんだね。」

自分でも知っていた。
厄神は字の通り厄が降ってくるんだ
自分に近づいたら何もかも不幸になっていく
だから友達が一人も出来ない。
私は影の存在
ここにはいてはいけない存在。

???
「私が、光になってあげるよ。」

ネララ
「ほ、本当か!? でも、あんた・・・。」

???
「大丈夫だよ。 目が見えなくたって光の巫女になれる、あなたに少しでも・・・・。」


_______現在。


???
「起きなさい、いつまで寝ているのですか?」

トネネ
「お師匠様! しっかり。」

ネララ
「・・・・ん。」

夢でも見ていたのかな?
そうネララは思いながらまぶたをこする。
もう着いたのか夢の国。 そして私のふるさと。

ネララ
「ん・・・トネネそれに みまま様。」

みまま
「へぇ、覚えていたのね、あれっきり姿をみていないから。」

ネララ
「ご心配をおかけしたと思います。」

トネネ
「あのぉ・・・。」

2人の会話に割り込んで罰が悪そうな顔をしているトネネが喋りだす。

ネララ
「あ、トネネは初めてだったんですよね。 こちらはみまま様、私の母みたいな人です。」

みまま
「はーい、トネネちゃん! 私がみままですよぅ。」

トネネ
「は、はぁ・・・よろしく。」
(何なんだいきなりこのテンション変わったBBAだな。いきなりちゃんづけとかw)

みまま
「BBA? なにそれ美味しいの?」

トネネ
「美味しくないよ、 食べれないしね。」

ネララ
「あぁ、みまま様。この子には言っておきますから、気になさらないでくださいっ。」

みまま
「まぁ、いいでしょう、ネララ後でお話がありますいつものところに来なさい。」

みままには分かったといっておいた
セララと同じく声は優しいが・・・はっきり言って怖いし逆らいたくもない。
トネネもトネネだ、私以外にけして敬語を使わないのがいけない。

ああ、着いたばかりとはいえ、気がめいってしまう。
これだからトネネの性格は昔から変わらないな。

みままは用があるといって屋敷に戻ったようだ。
ひとまず安心だが、トネネに少し説教しなくては。
ここに来た目的も果たさなくては。

ネララ
「トネネ、少し話があります。」

トネネ
「ん? 何ですかお師匠様?」

ネララ
「あのですね・・・・」
(聞く気ないのね、そんなに面倒なことなのでしょうか?)

???
「あれぇ? ネララじゃん!」

遠くから声が聞こえる同時にこっちに走ってくる、せっかく話そうとしていたところなのに!

???
「久しぶり! 何年ぶりだろう? 元気にしていたか? あれから何していたんだ? 聞かせてよ!全部っ!」

ネララ
「はは、相変わらず質問が多いね、昔と変わらないな、らななはそれでも巫女なのですか?」

トネネ
(・・・ずいぶんと忙しいやつだな。 お師匠様とそっくり・・・かな?)

らななと呼ばれた巫女はトネネと同じ年ぐらい
全体に巫女と言えば思いつくのが赤い服だろうがこの国ではモミジやイチョウなどを象徴にしているので巫女の服ははるか昔から
黄色やオレンジ、橙色、山吹色など紅葉に合わせた色になっている。

彼女もこの国の巫女の一人でありみままに支える一人であるがまだ見習い。


らなな
「し、失礼なっ!これでもみまま様に支える巫女ですっ! 忙しいやつとか思ってるやつはわたしが相手になって・・・・」

ネララ
「はいはい、分かった分かった。 それで?何しにきたのです?」

らなな
「実はね・・・」

トネネ
(やってらんね、そこらへん散歩でもしますか。)



トネネはネララの隙をみてどこかに行ってしまった。
それにしてもここは変わった場所だな、地球・・・ではないし、もし地球の日本だったら今は春。
サクラという植物が花を咲かせる時期と前にお師匠様が言っていた・・・ような気がする。
それでもずいぶんと前なんだが、ね。

歩みを進めていると何だろうなんだかなつかしい。

そこはまだ小さいがモミジの木が植えられていて数枚葉が色をつけていた。
そばにはかなり古い祠(ほこら)があった。
祠の周りには名前(?)らしきものが彫られてあった、かすれていてなかなか読めない。

何でだろう? 以前私はここに来ている。
思い出せないよ・・・きっと大切な記憶なはずなのに。

???
「そこでなにをしているっ!」

トネネ
「!?っ」

???
「貴様、何者だ? そこはみまま様に許可がないと入れないのだぞ!」

!? まずい
トネネは走り出した。
この国では知らないことが多い。
お師匠様のところの方が安全だ。
さっきのところまで一気にかけ出そうとする

???
「逃げる気か? 面白い。」

謎の剣士は後を追ってくる
たぶんこの国の住人であると思うが。

トネネ
(逃げる・・・逃げたくない!)

くるっと体の向きを相手に向けるそれと同時に短剣を構える。
相手も腰の刀らしきものに手を掛ける。

???
「ほう、逃げないのか。 まさかさっきの言葉にムキになったとかではあるまいな?」

トネネ
「そのつもりは・・・ありませんけどっ!!」

カキィイイイン

刃物がぶつかり合う音
相手も刃物・・・しかも二刀流。
数では相手の方が勝っているし、力もこっちが押されている。

???
「ん? おぬしの刃物が泣いておるぞ? それが本気か?」

トネネ
(くぅ・・・完全に馬鹿にされている、ここで乗ってしまったらこっちが本当の・・・)

???
「よそみをしていていいの・・・かっ!?」

ガキーーーーン

またぶつかり合う音。
お師匠様と修行している音とは全然ちがう、鈍く汚れた音・・・。

視線と視線が交じり合う。
相手は女、女剣士。 といってもこの国は和服っぽいのが多い。
見た目で言うと忍者。

トネネ
「くっ・・・名を、名を名のれっ・・・そっちから攻めてきているんだろ?」

???
「わたしか? わたしは・・・。」

その時

ネララ
「おい、そこで何をしているのですか? 今すぐやめなさいっ!」

トネネ
「お、お師匠様っ。」

らなな
「ちるる様っ! その方に手を出してはいけないのですっ! おやめ下さい!」

ちるる
「・・・・らななか。」

そういうとちるると呼ばれたケロン人は二刀流をふところに納め、同時にトネネも短剣を納める。


らなな
「ちるる様! ここでは喧嘩や暴力、無益な殺生は禁じられているのにあれほど言ったはずなのに!」

ちるる
「あ・・・あぁすまない。」

一方、
ネララ
「だ、大丈夫ですか!? 怪我はありませんか?」

そっとネララはトネネに手を差し出す。

トネネ
「・・・大丈夫です。 勝手な行動で自ら離れてしまって申し訳有りませんでした。」

ネララ
「まったく・・・でも、無事で何よりです・・・さて。」

ネララはちるるの方を見つめる。
そっちはそっちでらななが説教をしている。

ネララ
「らなな、もうちるるも反省しているはずです、 その辺にしてあげなさい。」

らなな
「・・・でも、あれだけ言っても聞かないですよ!? あれでもみまま様の・・・」

ネララ
「ここで説教するのもなんですし、みまま様に呼ばれているのでそこで。」

らなな
「そうですね・・・あ、でもわたしはまだ巫女の仕事があるので3人で行ってください!! ではっ。」

トネネ
(・・・逃げたな。)

仕方なく3人でみままの屋敷に行く事にした。
西の空には夕焼けが見えた。
                      第3章 第1話 完